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耐震改修の手順
耐震改修の実施に向けては、一般的には、次のような手順を踏みます。
耐震診断の実施
1. 耐震改修計画の作成
2. 耐震改修の実施の決議
3. 耐震改修実施設計
4. 耐震改修計画の認定
5. 耐震改修工事の実施
1. 耐震改修計画の作成
耐震性の評価結果をもとに、耐震改修で要求する目標値を定め、最適な耐震改修計画を検討します。具体的には、耐震改修の基本的考え方、採用する改修工法や補強工法、耐震改修の目標値に付し必要な補強部材等の断面やその数量の算定、補強部材の配置などについての基本計画を定めます。この場合、所管行政庁(建築基準法の事務を処理する地方公共団体)と協議を行い、建築規制の内容等を確認しながら計画にあたります。また、地元の地方公共団体(区市町村)に補助制度の適用の可能性について確認します。こうした手順を踏まえながら、耐震改修計画の基本計画がある程度固まった段階で、工事費の見積を依頼し、概算費用を明らかにします。
2. 耐震改修の実施の決議
耐震改修計画に基づき、耐震改修を行うことについて管理組合の集会で決議します。耐震改修工事は、区分所有法第17条の「共用部分の変更」にあたり、決議要件はその規模・内容・程度などにより決まります。
耐震改修計画に基づき、所管行政庁との協議を行ないつつ、耐震改修実施設計を行ないます。実際に採用する材料・工法・仕様等を定め、工事を行うための設計図書(工事仕様書及び設計図)を作成します。
3. 耐震改修実施設計
4. 耐震改修計画の認定
耐震改修計画が適切な内容であることの評価(各都道府県の耐震評価委員会による)を受けます。この評価書を添付して、所管行政庁に耐震改修計画の認定申請を行い、耐震改修計画の認定を受けます。
計画認定を受けるのは必須ではありませんが、計画認定を受けることで「耐震改修促進法」に基づき耐震改修工事を実施することとなり、建築基準関係規定の適用に係る緩和措置を受けることができます。また、補助や税制などの優遇措置を受けながら、耐震改修工事を実施することができる場合があります。
5. 耐震改修工事の実施
管理組合と施工業者との間で工事請負契約書を交わし、工事を行います。工事に先立ち、施工業者が管理組合の意見を踏まえて施工実施計画(工事工程計画、仮設計画、工事施工計画)を策定します。また、管理組合として、施工実施計画の内容を簡潔にとりまとめ、事前に区分所有者(居住者)向けの工事説明会を開催し、工事のスケジュールや工事期間中の注意点などを説明し、工事への協力を呼びかけます。
さらに、工事が設計図書どおりに適切に実施されるよう、工事監理者を定め、管理組合(発注者)と工事監理者との間で工事監理業務委託契約書を交わしておくことが重要です。監理者は長期修繕計画書を作成し管理組合の承認を頂き、耐震補強もその一環として監理し、工事が完了すると竣工図書を提出し、管理組合はそれを保存します。
耐震診断・改修に係る専門家の選定方法
耐震診断の実施にあたっては、建築構造の専門家である建築士(マンションの規模からみて通常は一級建築士)を選定して依頼する必要があります。
また、耐震改修計画の作成や耐震改修実施設計にあたっては、耐震診断業務との一貫性の観点から耐震診断を実施した建築士(建築構造の専門家)に引き続き依頼することが考えられますが、それに加えて、デザイン性も含めた改修計画の策定や管理組合の合意形成活動への支援などを受ける必要が生じるため、マンションの改修設計は一般に携わっている経験豊富な建築士やマンション管理士に依頼する事が大事です。さらに、耐震改修に伴う区分所有法上の手続については弁護士、耐震改修後の区分所有権等の評価については不動産鑑定士に相談する場合も考えられます。こうした専門家の選定にあたっては、耐震診断・改修に係る専門家のリストを整備している地方公共団体もあるので、まずは地元の地方公共団体(区市町村)の担当部所に相談することが考えられます。また、下表のとおり、耐震診断や耐震改修設計を実施する専門家(建築士、弁護士、不動産鑑定士等の有資格者)については、各専門家団体が情報提供をしています。こうした情報提供を受けて、基本的に自分たちで適切と考える専門家を選定して、施工業者の選定を依頼してください。
施工業者の選定
施工業者を選定するにあたっては、まずは、工事費見積を依頼する業者を選ぶ必要があります。特定の業者を随意で選ぶ方法と、公募により選ぶ方法とがありますが、公正さや透明性の確保をより重視する観点からは、業界紙などでの公募が望ましいと考えられます。
公募をする際には、応募業者の工事実績(改修工事の実施件数・金額、当該マンションと同規模のマンションでの改修実績の有無等)、技術資格者数、会社内容(資本金、年間工事受注額、社員数、経営の安定性等)などの書類の提出を受けて(これらの項目についてあらかじめ一定の参加条件を設定する場合もあります)、見積参加業者を選びます。この場合は改修の専門業者の方が適切な工事が出来ると考えられます。改修工事は建設業というよりはサービス業と言うべきです。居住しながら、工事を行うには新築と異なるセンス・観点が必要です。改修工事専業業者はこの辺の「勘どころ」を掴んでいます。見積参加業者が決まると、当該マンションで見積依頼内容の説明をします。
見積は共通の条件をもとに公正公平に行われる必要があるため、工事の見積条件を設定するためには、事前に調査診断によってマンションの現状を正しく把握した上で、改修設計(図面、仕様書、数量書、概算書の作成)を行った結果をもとに、見積を依頼する相手方に対して、次のような資料を提示する必要があります。
1. 改修工事設計図‥耐震改修工事の内容や範囲の明示
2. 改修工事仕様書‥足場仮設の方法、下地処理の方法、仕上げ材料の種類・量・塗付方法等の明示
3. 工事金内訳書‥工事対象数量の明示(依頼した建築士が積算士でもある事が望ましく、内訳書の数量まで明示して見積もり合わせを行う事が良い)
4. その他‥工事の期間、工事金の支払方法、監督・検査の方法など工事に拘わる条件
各社から見積書が提出されれば、個々の見積内容、単価、金額などをチェックし、金額に大きな差がある場合などはその理由を確認します。また、施工者の工事能力や施工体制や経験などのヒアリングを別途行い、最終的に適切であると考える施工業者を選定します。なお、複数の施工業者を比較して管理組合だけで判断することは難しいので、是非経験豊富な工事監理者に協力を求めてください。
工事監理者の選定
工事監理では、建築士の資格を持った専門家が、設計図書どおりに施工が行われているか承認し欠陥の発生を未然に防ぐとともに、関連業務として施工者選びのアドバイスや工争代金に関するチェックなどを行います。
建築主である管理組合が、建築士である工事監理者を定めなければならないことになっていますが、耐震改修実施設計を行った専門家が工事監理者になるのが一般的です。
耐震改修計画の作成のポイント
マンションの耐震性の評価結果、敷地条件等に影響される施工性、専有部分の配置や区分所有者の特性などを総合的に踏まえて、最適な耐震改修計画を検討します。
耐震性を高める効果的な計画であること
耐震改修の工法には・、?耐震補強工法、?制震補強工法、?免震補強工法、の三つの工法があります。最近注目されている制震補強工法や免震補強工法は、改修後の居住性などに影響を及ほさずに地震の建物振動を抑制することができ、適している建物では、採用できれば非常に効果的な工法です。ただし、相対的に工期が長くなり、コストも高くなります。
一方、耐震補強工法は、相対的に工期が短く、コストも低いため、マンションで最も採用されている工法です。壁の増打ちや鉄骨プレース(斜材)の設置などにより建物の強度を高める強度型補強と、炭素繊維シートや銅板を柱や梁に巻き付けて変形に対する粘り強さを高める執性型補強という方法があります。こうしたメリット・デメリットや建物諸条件を踏まえて、当該マンションにおける最適な耐震改修工法を選択し、要求する耐震改修の目標値(震度6強以上の地震に対して倒壊等しないことを求める現行の耐震基準レベル以上)を確保します。耐震性を効果的に高める計画が必要です。
なお、作成した耐震改修計画は、各都道県の耐震評価委員会による評価を経て、所管行政庁の認定を受ける事が望まれます。これにより、耐震改修工事に実施に拘わる様々な支援措置を受けることが可能となります。
現実的な計画であること
建物の耐震上の弱点を解消し効果的に耐震性を向上させる計画であると同時に、マンションの場合、多数の区分所有者の合意形成をする1で、現実的な計画であることが条件となります。次のような観点も含めて、計画を総合的に検討する必要があります。
1. 建物外観の変更の程度
耐震改修の実施後に建物の外観形状が大きく変化しないかどうかの検討が必要です。外観が大きく悪化するような改修は、区分所有者の合意を得る1での問題になりやすいため、外観デザインへの配慮も必要となります。
2. 居住性への影響の程度
耐震補強工法の採用を検討する場合、耐震改修後の日照・通風、眺望などの専有部分の居住性についての検討が重要となります0また、専有部分の床面積が小さくならないかどうかの確認も重要です。できる限り、耐震改修後の居住性を悪化させないような補強計画を検討する必要があります。
特に、建物全体の耐震性を向上させるために、一部の階や部分のみを補強し、特定の住戸(専有部分)の居住性や使用性に影響を及ぼす計画は、代替案が採れるのであれば避けたほぅが無難と考えられます。こうした計画をどうしても検討せざるを得ない場合は、居住性が悪化する住戸の区分所有者の同意が得られるよう合意形成に十分配慮する必要があります。
3. 工事の施工条件
敷地条件からみた資材の搬入の可能性や工事期間中の輩場の使用の可能性(輩場を資材置き場等として使用せざるを得ない場合は、管理組合として敷地外に工事期間中の置場を一括して確保することが必要となる場合があります。
耐震改修の合意形成
耐震改修の実施に向けて、一般的には次のような段階的な合意形成が必要になります。
1. 耐震診断の実施についての合意
耐震診断の実施・耐震性の評価
2. 耐震改修の検討についての合意
耐震改修計画の策定
3. 耐震改修の実施についての合意
1. 耐震診断の実施についての合意
耐震診断の実施の必要性について理事会が提起を行い、管理組合の集会において決議します。耐震診断の実施は、通常の管理事項(区分所有法第18条)にあたるため、集会の普通決譲(区分所有者数及び議決権の各過半数)で決することができると考えられます。
なお、この集会においては、耐震診断費用の予算化について決定する必要があります。管理費の中から支出できることが望まれますが、管理費が不足する場合は、集会の決議を経て修繕積立金を取り崩すことが必要となる場合も考えられます。
2. 耐震改修の検討についての合意
耐震診断の結果を踏まえ、当該マンションの耐震性を評価し、耐震改修の必要性や可能性についての検討を行います(この場合、建替えとの比較検討が行われる場合もあります)その結果、耐震改修による対策が適切と判断されれば、管理組合の集会において、耐震改修計画の策定を行うことについて決議します。この決議においても、計画策定費用の予算化について決定する必要があります。一般的には、集会の決議を経て、修繕積立金を取り崩したり、借り入れをしたりしてその経費に当てる事が多いようです。
耐震改修工事の実施の最終的な決定も、管理組合の集会において行います。耐震改修工事は区分所有法第17条の「共用部分の変更」にあたる工事となり、その決議要件は、共用部分の形状又は 効用の著しい変更にあたる場合と、そうでない場合とで異なります。
共用部分の変更工事が、形状又は効用の著しい変更にあたるかどうかについては、実際の工事における変更を加える箇所・範囲、変更の態様・程度などを総合的に勘案して個別に判断する必要がありますが、一般的には、柱や梁に炭素繊維シートや鉄板を巻き付けて補修する工事や構造躯体に壁や筋かい(斜材)などの耐震部材を設置する工事で基本的構造部分への加工が小さい工事については、普通決議により実施ザ可能であると考えられています。
ただし、耐震改修工事の内容が、特定の住戸の壁のコンクリートの増打ちにより、その専有部分の床面積を小さくする場合や、特定の住戸の窓の外に鉄骨プレース(斜材)を設置することで採光や眺望を著しく悪化させる場合など、特定の住戸の専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければなりませんので注意が必要です。建物全体の耐震性を確保するために、どうしても特定住戸に影響を及ぼせざるを得ない場合は、専有部分の床面積の減少や眺望の悪化などを考慮して各区分所有者の費用負担額を調整するなどして合意形成を進めることも考えられます。
なお、集会の決議で耐震改修の実施を決定するに先立ち、資金計画を立てておく必要があります。この場合、1.補助金を受けることができるのかどうか。2.修繕積立金で工事費の全額を賄うことができるのかどうか。3.修繕積立金が不足している場合には、借入金で対応するのか、区分所有者からの一時金徴収でまかなうのか、ある借入金徴収とを併用するのか。4.借入れをする場合は、以後の修繕積立金は幾らに増額されるのか。といった点を踏まえて管理組合内で十分に議論し合意形成をする必要があります。
構造躯体の耐震補強の方法
捩れの生じやすい建物、地盤の悪い建物、剛性率の低い建物等に注意が必要です。これらの事は建築士のチェックが必要で充分説明を受けてください。
避難経路の対策
玄関扉の開閉不能、外廊下・バルコニーの脱落防止、エキスパンション・ジョイントの対策、屋外鉄骨階段の対策、窓ガラス対策、設備機器の対策等があります。これらの事も建築士のチェックが必要で充分説明を受けてください。
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